赤ひげ診療譚
あかひげしんりょうたん
08 氷の下の芽
08 こおりのしたのめ初出:「オール読物」1958(昭和33)年12月分量:約52分
書き出し:一十二月二十日に、黄鶴堂《おうかくどう》から薬の納入があったので、二十一日は朝からその仕分けにいそがしく、去定も外診を休んで指図に当った。保本登は麹町《こうじまち》の家へゆく約束があり、去定から三度ばかり注意されたが、自分が出かけると、あとは去定と森半太夫の二人になってしまうため、なま返辞をするだけで、そのまま仕分けを続けていた。午後二時の茶のとき、登は半太夫と食堂《じきどう》へゆき、いっしょに茶...