海からきた卵
うみからきたたまご
初出:「赤い鳥 第二十一巻第五号」赤い鳥社、1928(昭和3)年11月号分量:約12分
書き出し:一ミル爺《じい》さんは貧しい船乗りでした。若いときからつぎつぎに外国の旅をつづけてきましたので、もう今では大がいの国は知っているのでした。ところがただ一つ日本を知らなかったのです。いつも、印度《インド》を通って支那《しな》へやってくる爺さんの船は、上海《シャンハイ》で用をすますと、そこから故郷のフランスの方へ帰っていってしまうのです。「日本へ行ってみたいな。そしたら、もう船乗りをやめてもいい。」爺...