「音楽に就いて」の感想
音楽に就いて
おんがくについて
初出:「興風」1922(大正11)年2月

会津八一

分量:約6
書き出し:既に美育部を持つてゐる早稻田中學校が新に音樂會を興してその發會式をやらうとする其の日から、又病氣で暫く引き籠る事になつた。私は元來音樂には殆ど無智で趣味も深いとは言へない。けれども相應な希望は持つてゐる。病中ながら、その希望を會員の諸君にも會員外の諸君にも一寸申し上げてみたいと思ふ。吾々は何の爲に畫を描くか?かつて美育部の展覽會で私がかう云ふ問題を出し、そして自分でこの問に答へた事がある。吾々が美...
更新日: 2021/11/28
e4c0eb387665さんの感想

西欧の諸外国とは違う土壌に根付いた民謡、俚謡、俗謡の世界にグリークラブは多分著者の生きた時代には余りに異質な音楽体験に違いなかったはずで、今でも日本ではトライバルな性質に変質してしまう音楽の外来種についても同じだと思う。理想主義は無いよりマシ、音楽自体も無いよりある方がいいけれど、人々を結合し化合させ、或いは本来の音楽が商業的に成功するだけの識別装置として機能するだけならば、その命も短いものではないか。そんなことを考えさせられる一文であった。川上音次郎のオッペケペー節は許容せられたろうか。ウィーンのCharivari、ドイツのKatzenmusikのようにすぐさま民衆自体から音楽が身近に発生する民族ではこれからもなさそうであるし。