洪川禅師のことども
こうせんぜんじのことども
初出:「大乗禅 第二十一巻七号」1944(昭和19)年7月1日分量:約13分
書き出し:近頃洪川老師のことを調べて居ると、色々有り難きことに逢著する。自分も今老師の亡くなられた年に殆んど近づいて居るが、自ら省みて足りないことのみ多きを愧《は》ずる次第である。修養は一生を通じての事業でなくてはならぬ。「これでよい」などと、どこかで一休みすると、そこから破綻の機会が生れる。家康の云ったように、人生は車を推して長い坂を上るようなものだ、一寸でも緩みが出ると、後退する外ない。人生は進むか退く...