鹿山庵居
ろくさんあんきょ
初出:「禅道 第六五号」1915(大正4)年12月5日分量:約16分
書き出し:人の心と云うものは本来縛らねばならぬように出来ておるのかどうかは知らぬけれども、吾等は何かかんか云うてこの心を繋ぎ、この身を苦しめておる。何もない処にぽかんとしておることが出来ぬ。もしそんなことでも有ると、自分で屹度《きっと》何か手頃の束縛を造り出す。蜘蛛が巣を作り、蚕が繭を作ると全く一般である。何かと云うと、平等であるとか、一視同仁であるとか云う人間が、社会なるものを造ると、此処《ここ》に貴族と...