指導物語
しどうものがたり
或る国鉄機関士の述懐
あるこくてつきかんしのじゅっかい初出:「中央公論」1940(昭和15)年7月号分量:約46分
書き出し:鉄道|聯隊《れんたい》の兵隊さんを指導することになった。私には本当に久し振りであった。なんでも運転係の助役さんの話では、今度は特別よい機関士ばかりを指導者に選んだと云うことだが、私にしても大変嬉しいわけである。私もこれで三十年近くも機関士をやっているのだから、例えばその兵隊さんがずぶの素人《しろうと》でも、大した頭の持ち主でなくとも、立派に一人前にしてやらなければならない。僅《わず》か三ヶ月やそこ...