「社日桜」の感想
社日桜
しゃにちざくら

河井寛次郎

分量:約2
書き出し:社日桜というのは、町の西端れの田圃の中に突出している丘の突端の、社日さんの石碑の傍にあった。昔はこの一本の桜で、丘中が花で埋まったと言われた。余程枝を張った木だったと見えて、近くでは一面に花しか見えず、遠くからは、大きな白雲の様だったと言われた。社日さんというのは、五風十雨の平穏や、豊饒を祈る農家の人々の心のささえとなった神様であったが、誰が植えたか、この桜は、幹も枝も栄えて何時とはなしに、神様の...
更新日: 2019/11/07
19双之川喜41さんの感想

 社日桜は 枯れてしまったけど 土の中には 先祖のこぼした 花見酒や 賑わいが染み込んでいるはずという。

更新日: 2018/12/08
b25b0bd2dcfbさんの感想

社は土地の守護神を意味し、社日とは産土神を祭る日のことらしい。 かつて絶世の大樹として地域で親しまれたが枯れてしまった桜の話。「この桜は、幹も枝も栄えて何時とはなしに、神様の座にとって代って、春の恵みを施す場所になってしまった」「木は枯れてしまったけれど、花はまだ唄の中には咲いていた」――これほどまでに愛されたから、新たな桜が植えられた。こういうことは全国各地であったとの談。その代わりである染井吉野は逸話も含めて大層魅力的な花だ。人の都合で造られた存在であるかの花も現在代替品種への植え替えが進んでいる。品種改良される動植物は星の数ほどあるが、愛でられるためだけに生まれて死んでいく花々はことさら儚い。