社日桜は 枯れてしまったけど 土の中には 先祖のこぼした 花見酒や 賑わいが染み込んでいるはずという。
社は土地の守護神を意味し、社日とは産土神を祭る日のことらしい。 かつて絶世の大樹として地域で親しまれたが枯れてしまった桜の話。「この桜は、幹も枝も栄えて何時とはなしに、神様の座にとって代って、春の恵みを施す場所になってしまった」「木は枯れてしまったけれど、花はまだ唄の中には咲いていた」――これほどまでに愛されたから、新たな桜が植えられた。こういうことは全国各地であったとの談。その代わりである染井吉野は逸話も含めて大層魅力的な花だ。人の都合で造られた存在であるかの花も現在代替品種への植え替えが進んでいる。品種改良される動植物は星の数ほどあるが、愛でられるためだけに生まれて死んでいく花々はことさら儚い。