結婚
けっこん
初出:「朝日評論 第一巻第一号」朝日新聞社、1946(昭和21)年3月1日分量:約15分
書き出し:姉の死と同時に私のところの家庭はもう久しく予期された行きづまりに到著《とうちゃく》した。残されたのは頭が悪くてもののいえない七十をこした兄と六十に手のとどく私、どうにもならない。病中は私が主婦の代役をし、お見舞にきて下さる親戚やお知合いの婦人の好意に頼って凌《しの》いできたもののそれは余儀ない窮余の窮策で、いつまでも続くものでなく、続けるべきものでもない。で、私は考えてたことを実行することにした。...