「クロイツェル・ソナタ」の感想
クロイツェル・ソナタ
クロイツェル・ソナタ

01 クロイツェル・ソナタ

01 クロイツェル・ソナタ

トルストイレオ

分量:約270
書き出し:『されど我なんじらに告げむ、およそ婦《おんな》を見て色情を起す者は、心の中すでに姦淫したるなり。』(マタイ伝第五章二十八節)『弟子イエスにいいけるは、もし人妻においてかくの如くば娶らざるにしかず。イエス彼等にいいけるは、この言《ことば》は人みな受納るること能わず。ただ賦《さず》けられたる者のみこれをなし得べし。』(マタイ伝第十九章十、十一節)一早春のことであった。わたしたちはもう二昼夜も旅行をつづ...
更新日: 2024/05/05
19双之川喜41さんの感想

 たまたま 車中に 乗り合わせた 乗客達の 普段なら 口にすることは 無いようにも 思われる 会話を中心に 文章は 紡がれる。著者は 性的に 潔癖で 在るべきことを 上位に 置く。本文だけでは 気が済まなかったようで 後書きにおいても 執拗に 持論を 開陳する。かつて 道徳復興運動なるものが 世上を にぎわした 時期が 在ったけど 人口減少下の こんにちでは あまり 支持されない 著者の 立論と 感じた。ただ 極論は 問題点の 所在を 明らかにする 利点は 否定できないとも 想ったのである。

更新日: 2020/10/06
496b7f29770aさんの感想

汽車に乗り合わせた人達が語り合う。そんな中で、妻をあやめてしまった男(彼)の語りが延々と続く。実際に起こりかねない夫婦間の軋轢と不倫疑惑と、嫉妬、憤怒、そして終盤の妻をあやめてしまう場面……読んでいて身震いする生々しさがあった。妻の死を受け止めた時の彼の悲しみは何とも言えない…… 本編を補足するような「あとがき」も、なかなか興味深い。作者曰く作品自体は「短篇」らしいが、このあとがきもまた一つの短篇だと思う。キリスト教に関しては個人的に全くの無知であるが、噛み砕いて諭されると分かりやすいなと思えた。