たまたま 車中に 乗り合わせた 乗客達の 普段なら 口にすることは 無いようにも 思われる 会話を中心に 文章は 紡がれる。著者は 性的に 潔癖で 在るべきことを 上位に 置く。本文だけでは 気が済まなかったようで 後書きにおいても 執拗に 持論を 開陳する。かつて 道徳復興運動なるものが 世上を にぎわした 時期が 在ったけど 人口減少下の こんにちでは あまり 支持されない 著者の 立論と 感じた。ただ 極論は 問題点の 所在を 明らかにする 利点は 否定できないとも 想ったのである。
汽車に乗り合わせた人達が語り合う。そんな中で、妻をあやめてしまった男(彼)の語りが延々と続く。実際に起こりかねない夫婦間の軋轢と不倫疑惑と、嫉妬、憤怒、そして終盤の妻をあやめてしまう場面……読んでいて身震いする生々しさがあった。妻の死を受け止めた時の彼の悲しみは何とも言えない…… 本編を補足するような「あとがき」も、なかなか興味深い。作者曰く作品自体は「短篇」らしいが、このあとがきもまた一つの短篇だと思う。キリスト教に関しては個人的に全くの無知であるが、噛み砕いて諭されると分かりやすいなと思えた。