日日の麺麭
ひびのパン
初出:「新女苑 第二十巻第四号」実業之日本社、1956(昭和31)年4月1日分量:約13分
書き出し:末吉は屋台のおでん屋である。ことし四十五になる。大柄で躯つきもがっしりしている。生れつき丈夫な方で、これまであまり病気などしたことはない。しんが丈夫なのであろう。それほど労働で鍛えたという躯でもないが、屋台車をひく分にはさわりはなかった。それでもこの頃は、あまり無理は出来ないと自分でも用心している。郊外のM町に住むようになってから一年ほどになる。おでん屋をはじめたのも、ここに移ってきてからである。...