トシオの見たもの
トシオのみたもの
初出:「朝日新聞」1921(大正10)年4月21日~30日分量:約27分
書き出し:一トシオは、大そう賢《かしこ》く生れ付いた男の子でした。それゆえ、まだやっと、今年十一歳になったばかりですのに、もうこの世のなかのいろいろな方面の、様々なことを知って居ました。書物などで読んだことも、一々はっきり、頭に覚え込むという風でした。しかし、あまり、いろいろ知り過ぎたせいで、このごろ敏夫は却《かえ》って、沢山な疑いを持つ様になりました。先ず、どうして世の中には、こんなに無駄が多かったり、不...