「オペラの帰途」の感想
オペラの帰途
オペラのきと
初出:「令女界」1932(昭和7)年9月号

岡本かの子

分量:約4
書き出し:オペラがはねて、一人の東洋婦人がタキシーを探していた。一人のオペラ帽を光らした中年の紳士が婦人を誘って戸の開いている立派な自家用自動車の傍へ連れて行った。婦人「あら、これはタキシーではありませんわ」フランス紳士「そうです、これは私のです」うしろから髪をのばしたばかりの小柄の東洋の青年が、せかせか歩いて来た。青年「ママン!誘惑されちゃいけない※」紳士「あなたは?」青年「これ、僕のママです。ママこっち...
更新日: 2022/02/12
cdd6f53e9284さんの感想

もし、そういうものがあるとすれば、これは、いわゆる「ナンパ小説」。考えてみれば、そういうジャンルがあっても面白いかも。いかにも吉行淳之介が得意にしそうな前振り。しかも、ここには、吉行好みの母子の肉親を超えた妖しい相姦関係をさえ邪推させる余地も残されている。小説自体としては稚拙だが、岡本かの子には、芥川龍之介の代筆説がまことしやかにささやかれたことを思えば、味わいもヒトシオといえよう。