岡本かの子
もし、そういうものがあるとすれば、これは、いわゆる「ナンパ小説」。考えてみれば、そういうジャンルがあっても面白いかも。いかにも吉行淳之介が得意にしそうな前振り。しかも、ここには、吉行好みの母子の肉親を超えた妖しい相姦関係をさえ邪推させる余地も残されている。小説自体としては稚拙だが、岡本かの子には、芥川龍之介の代筆説がまことしやかにささやかれたことを思えば、味わいもヒトシオといえよう。