猟奇の果
りょうきのはて
初出:前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月分量:約352分
書き出し:前篇猟奇《りょうき》の果《はて》はしがき彼は余りにも退屈屋で且《か》つ猟奇者であり過ぎた。ある探偵小説家は(彼も又退屈の余り、此世《このよ》に残された唯一の刺戟物として、探偵小説を書き始めた男であったが)この様な血腥《ちなまぐさ》い犯罪から犯罪へと進んで行って、遂《つい》には小説では満足出来なくなり、実際の罪を、例えば殺人罪を、犯す様《よう》なことになりはしないかと虞《おそ》れた由《よし》であるが...