「影男」の感想
影男
かげおとこ
初出:「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

江戸川乱歩

分量:約391
書き出し:断末魔の雄獅子《おじし》三十二、三歳に見えるやせ型の男が、張ホテルの玄関をはいって、カウンターのうしろの支配人室へ踏みこんでいった。ずんぐりと背が低くて丸々と太ったちょびひげの支配人がデスクに向かって帳簿をいじくっていた。そばの灰ざらにのせた半分ほどになった葉巻きから、細い紫色の煙がほとんどまっすぐに立ちのぼっていた。ハバナのかおりが何か猥※《わいせつ》な感じで漂っていた。「来ているね?」やせ型の...
更新日: 2020/01/26
320bd84c6db6さんの感想

初めて読んだのは小学生の時でした。 とても子どもが読む内容ではありませんが、想像力だけは一丁前な子どもを乱歩の文は魅了しました。 とあるシーンが忘れられず、また時を経て読み返してみましたが、良いものは幾つになって読んでも素晴らしい。 幻想怪奇の世界が広がり、おぞましい犯罪者たちが交錯し、明智の登場で破滅的な現実へと収束する。まさに現し世と夜の夢の狭間のような作品だと思いました。 ボリュームはありますが、連載だったこともあって章立てられているので読みやすいです。 乱歩の長編では本作が一番好きです。