文学の本筋をゆく
ぶんがくのほんすじをゆく
坂口安吾選集
さかぐちあんごせんしゅう初出:「読売新聞 夕刊」1956(昭和31)年8月1日分量:約1分
書き出し:文学の本筋をゆく坂口安吾選集佐藤春夫坂口安吾の文学はいささか奇矯で反俗的なところはあつても、文学としては少しも病的なものではなく、高邁な精神をひそめたすぐれたものと思ふ。その点、太宰治のどこまでも頽廃的でいぶしのかかつたセンチメンタルなものよりわたくしは坂口の文学の方が文学の本筋だと思つてゐる。坂口は世俗的などんな先入観念にも煩はされるところなくぢかに人間を見た。そのため人間の心理は彼は可なり深く...