「面」の感想
めん
初出:「小説新潮」新潮社、1948(昭和23)年5月号

富田常雄

分量:約22
書き出し:巣鴨の拘置所から、戦犯容疑者としての嫌疑が晴れて釈放されたわしが、久しぶりに大磯の「圓月荘《えんげつそう》」の扁額《へんがく》をかけた萱門《かやもん》の戸摺石《とずりいし》の上に立った時、最初に、耳ばかりでなく、体全体に響き渡る様に聞えたのは波の音であった。それを聞くと、わしははっと我れにかえったという言葉通りに始めて自分を取り戻した様な心持ちになった。「御前《ごぜん》、世の中は変わりまして御座い...
更新日: 2024/10/04
8ce1e1ed689eさんの感想

悲しい作品ですね

更新日: 2022/05/01
acf6f4ff1b74さんの感想

伯爵という肩書きを鼻にかけ、側室の三人や四人、ものに出来るという自負があった老人が、奈世という下女の心が自分を思ってなどいなかったことを知らしめられて、白茶けた淋しさを覚え、それでも淋しくはないと意地を張る、本当は淋しいに違いないが、淋しいと言えない昔の男の愚かさが滲み出て、物語は終わる。

更新日: 2020/08/29
7015a4684970さんの感想

生意気な爺の話。戦時下にもこんな老害がはびこっていたのかと思うと戦死した若者たちが不憫でならない。 戦後の混乱の中ですら、自分の孫曾孫さえ可愛いと思わず、夜の世話までさせた下女の死顔にさえありがとうを言えない…。こんな人間なら巣鴨プリズンから出てこないで、そのまま戦犯として処刑されちまってた方が日本のためというもの。 死んだ下女について、面がどうのこうのと悪態ついてるけど、こいつこそ戦前の貴族という面をさっさと脱いだらどうだ。 周囲の事象全てを自分の都合でしか解釈できない男の一人語りは読んでいて胸糞が悪い。

更新日: 2020/08/24
19双之川喜41さんの感想

 巣鴨の刑務所から 釈放された 伯爵だった私は 大磯の屋敷に戻った。14歳から 奉公に上がり 17歳から 夜伽の相手をさせていた娘は 笑うことも 泣くことも 口数も少なかった。回春蒸しタオルなるもので 娘に 下半身の 性的な世話を 命じたりしていたけれど 私に 挨拶をしに来た時 娘は顔を赤らめた。その後 青年と 抱き合い心中を してしまった。娘の死に顔は 恍惚の表情で 二人きりの時は 無表情の面を 外すのだと 感じた。云うところの 老人文学であろうか。少しだけ 興味深いと 感じた。