悲しい作品ですね
伯爵という肩書きを鼻にかけ、側室の三人や四人、ものに出来るという自負があった老人が、奈世という下女の心が自分を思ってなどいなかったことを知らしめられて、白茶けた淋しさを覚え、それでも淋しくはないと意地を張る、本当は淋しいに違いないが、淋しいと言えない昔の男の愚かさが滲み出て、物語は終わる。
生意気な爺の話。戦時下にもこんな老害がはびこっていたのかと思うと戦死した若者たちが不憫でならない。 戦後の混乱の中ですら、自分の孫曾孫さえ可愛いと思わず、夜の世話までさせた下女の死顔にさえありがとうを言えない…。こんな人間なら巣鴨プリズンから出てこないで、そのまま戦犯として処刑されちまってた方が日本のためというもの。 死んだ下女について、面がどうのこうのと悪態ついてるけど、こいつこそ戦前の貴族という面をさっさと脱いだらどうだ。 周囲の事象全てを自分の都合でしか解釈できない男の一人語りは読んでいて胸糞が悪い。
巣鴨の刑務所から 釈放された 伯爵だった私は 大磯の屋敷に戻った。14歳から 奉公に上がり 17歳から 夜伽の相手をさせていた娘は 笑うことも 泣くことも 口数も少なかった。回春蒸しタオルなるもので 娘に 下半身の 性的な世話を 命じたりしていたけれど 私に 挨拶をしに来た時 娘は顔を赤らめた。その後 青年と 抱き合い心中を してしまった。娘の死に顔は 恍惚の表情で 二人きりの時は 無表情の面を 外すのだと 感じた。云うところの 老人文学であろうか。少しだけ 興味深いと 感じた。