佐藤春夫
佐藤は 芥川に並々ならぬ因縁を 感じていたようではある。 例えば それぞれ 偶然購入した 座布団と時計は 奇しくも全く同じものであったという。 洋服を着るとき 猿股 を着用しない佐藤は 鵠沼の海岸で 俄かに 皆が泳ぎ始めた時 その旨を芥川に告げると 芥川は 着用していた生猿股を 佐藤に 貸し与えたという。 君子の交わりとでも言うべきか。