だんまり伝九
だんまりでんく
初出:「少年倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年9月号分量:約23分
書き出し:一「どうだい、赤松《あかまつ》さまは、いつ見ても恐ろしいなあ、あのかっこうを見てくれ」「じつにどうも人間とは思えねえ」「や、や、今日はじまんの樫棒《かしぼう》だぜ」ここは土佐《とさ》の国|浦戸《うらど》の城中。大館の広庭では、領主|長曾我部元親《ちょうそかべもとちか》をはじめ家臣のならぶ前で、いましも二人の武士が試合を始めようとしているところであった。そのようすを外庭の生け垣のかげから、十四、五人...