初午試合討ち
はつうましあいうち
初出:「新少年」博文館 、1938(昭和13)年2月号分量:約24分
書き出し:一「大変だあ大変だあ、頭《かしら》いるか」表からやみくもに跳込んできた安吉《やすきち》、お天気安という綽名《あだな》のある若い者だ、——ちょうどいま上りっ端《ぱな》で、愛用の鳶口《とびくち》を磨いていたは組の火消し頭|佐兵衛《さへえ》、「ええ騒々しいや、頭アいるかって眼の前にいるおいらが見えねえのか」「ほ、まったくそうだ」「呆《ほう》けてやがる、なにが大変だ」「なにがって落着いてちゃあいけねえ、は...