「貸借」の感想
貸借
たいしゃく

柴田宵曲

分量:約5
書き出し:如何なる富豪が、どれだけの金を費したにしても、自分の欲しい書物を悉く所有することは出来ない。資力に恵まれぬのを原則とする一般の読書子に在つては猶更の話である。書物の貸借は必然の結果として生ずる。それに伴つて又いろ/\な問題も起つて来る。藤原惺窩の時代は兵戈戦乱が全くをさまらず、学を講ずる者も乏しかつたが、書物の入手も至つて困難であつた。「十八史略」を角倉与市に借りて繕写したといふ一事を見ても、その...
更新日: 2018/08/25
いちにいさんの感想

なるほど 金と本は違う 1000円貸して返ってこなくとも 、別に不自由はしない 1000円の本を貸して返ってこなかったら、まして、その本が絶版本であったら、全国の図書館を巡らなければならなくなるほど不自由だ。 (貸して欲しい本は普通、書店や図書館で見つけられない本なのだ。) 本は手元にあって本なのだ。 必要な時になくてはならない。 貸した翌日、必要になることもある。 (同じ本は普通2冊所有してない。) 本はコピーするものではなく、書き込むものだ、と思う。だから、私の本はカラフルだ。青緑赤などのボールペンやマーカーで賑やかだ。他人には読みづらい本になっている。その意味では他人には貸せない。他人でなくとも、自分の子どもも、たまに私の書斎を漁っているようだが、最後は断念しているらしい。やたら表紙の綺麗な「人間失格」がダイニングテーブルにおいてあった。中も綺麗だ。カラフルではなく、黒い活字が静かに並んでいる。 確か、私の本なら「恥の多い生涯」に赤のラインマーカーが引かれているはずだ。