医学生ならぬ身、いずれも知らぬことばかりでよくもまあこういうエッセンスを20頁足らずの編に詰め込んだものだと思う。 淡々と客観的に経験や現象そのものを記録した掌編(エッセイと読んでいいのかどうかよくわからない)のように思うが、それが却って事実を冷徹なる事実として認識されられ、読み手の主観を呼び起こす。読み手が移入したその瞬間に異変の描写がある。急に面前に現れたかのような奇異譚に思う。 実は読み返してみると、怪異でも何でもなく、単なる事実と現象の描写が続いているだけのような気もする。確かに異変と掲題してあるセンスにも驚かされる。いや、そういう意味ではすでにこの読み方が怪異譚書こうとした氏の術中にハマっているのだろうか…
この文章は 空腹時には 読むのを 避けた方が 良いと思う。 生々しい 解剖の様子が 克明に 説明されているのである。 解剖中の 遺体の腕が 突然 解剖中の 医師の 体に当たり 遺体の 頭髪から 櫛が 転がり落ちる という異変である。 法医学教室や病理学 教室とは異なり 系統的に 研究していくのが 解剖学教室 という。 他の二つの教室と 区別するために かげでは 大解剖学 教室 などと呼んでいるらしい。