夜中に突然、激しい腹痛に襲われ独り煩悶する。 すぐにでも家人に告げてどうにかして貰いたいのだが遠慮もあったりして、取り敢えずは夜明けまで我慢しようと思う。 この辺りの描写は子供の頃に幾度も経験した「あるある感」満載の箇所だ。 この作品でも、ようやく夜が明けて家人に告げることができて、医者も手配し一安心、ほどなく来診があって病名も判明し、気分的に落ち着く感じが淡々と書かれている、「胆石」だった。 相変わらず激痛はあるが、周囲には見守ってくれている多くの目があるので、夜中に、独りで煩悶したあの孤立感は、もはや存在しない。 徐々に痛みが薄らいでいくのと並行して食欲が戻っていく歓びを、例えば、いつの間にか鈍感に見過ごしてしまっていた自然の移ろいを改めて新鮮に感じたり、口にできる食べ物に今まで感じたことのないような甘露を味わったりするなかで、「生きている歓び」を巧みに描写している。