月見草
つきみそう
初出:「四国新聞」四国新聞社、1954(昭和29)年7月分量:約3分
書き出し:月見草山之口貘現在のところに住んで、まる六年になる。東京都練馬区なのであるが、山手線の池袋駅からは、私鉄で十五分くらいのところで、まだまだたんぼや畑など私鉄の窓からもながめられて、いわゆる武蔵野を感じないではいられないのだ。ぼくの住んでいる家のすぐ前には、舗装道路がはっていて、石神井、新橋間のバスやその他の自動車が昼夜走っている。その道路を左へ百メートルほども行くと左右がたんぼになって、人家がまば...