劇団「笑う妖魔」
げきだん「わらうようま」
初出:「少年少女譚海」1938(昭和13)年夏期増刊号分量:約24分
書き出し:妙な電話「五郎《ごろう》さん、お電話です」書生の中野が扉《ドア》をあけて云った。「大層お急ぎの様子ですからどうぞ」「誰から?」「お名前を仰有《おっしゃ》いません」父の話に興じていた五郎は、話を中断されるのが残念そうに、軽く舌打をしながら廊下へ出た。——電話は階段の脇にある。「僕、五郎。誰だい?」受話器を耳にあてて云《い》うや否や、向うは待兼《まちか》ねていたように妙に喉へ詰った囁声《ささやきごえ》...