伊藤左千夫
雙之川喜1941 正岡子規の 根岸の庵を 訪れたものか それとも 訪問を 遠慮 すべきか 左千夫は 果てしなく 逡巡する。子規の 居宅を それとなく 覗き込んだりして 下駄先の 向きで 先客の 有無を 判じ 何回も 勝手しったる 先生の 家の 周辺を 挙動不審者の ように 歩き 疲れはてる。先生の 謦咳には 触れたいし もしも 病身の 先生に 差し障りが あると そのことが きもちに 重く のしかかる。 敬愛する 子規の 弟子としては 訪問 とはいえ 容易なことでは 無いのが 窺われる。