――生体解剖事件始末記――
――せいたいかいぼうじけんしまつき――初出:「文藝春秋 昭和三十二年十二月号」文藝春秋新社、1957(昭和32)年12月1日平光吾一
戦争も医学も知らない自分には、決して人道的とは言えない事件と感じたのが正直な感想です。だけどそれは平和な現代に生きているからこそ言えるだけなのかもしれません。 間接的ながら生体実験への加担者となり戦争犯罪者となってしまった平光氏の伝えてくる事とは何かを考える作品。
先ず、本作品を読ませていただいたことを有り難く思います。本作品の副題にある『生体解剖事件』の文字を見たとき、本作品の主題である九大の生体解剖事件、遠藤周作氏著の『海と毒薬』を思い浮かべたが、的を射ていた。但し、この作品は、小説ーーフィクションーーではなく、事件の核心に近く、実際にその事件の裁判により受刑された方の手記である。作中の文章は、第三者的視点を持って綴られており、状況がよく分かります。この作品に接しなければ、巷間の噂を事実のように考えていた自身に、哀れみを感じる次第です。もし、『海と毒薬』を読まれた方、これから読まれる方は、本作品のご一読をお薦めします。
海と毒薬ファンです。 九大医学部事件で起訴された、医師の側からの証言とも言える作品。事件に関わった人の内省が描かれており、短い淡々とした作品ではあるものの、罪とは何か。正義とは、と問いかけるものでした。