柳田国男
常民の生活史を明らかにしようとした柳田国男が、会報「民間伝承」を刊行し、民俗学をさらに深めようとしていたこの昭和10年、その頃、「遠野物語」を共に取材した水野葉舟は、怪奇趣味の方向に大きく舵を切って、怪談小説めいたものを幾つか書いたあと、ついにそれにも行き詰まり、千葉の片田舎に隠棲し沈黙にいたる。確かに、「遠野物語」には、そのような二面性はあるかもしれない。