谷崎文学の代表作「細雪」
たにざきぶんがくのだいひょうさく「ささめゆき」
初出:「日本文学全集 16 谷崎潤一郎(二)付録月報」新潮社、1959(昭和34)年11月10日分量:約4分
書き出し:谷崎文学の代表作「細雪」佐藤春夫谷崎文学の特長はゆつたりとしたゆたかな風格の重厚なところにある。さながらに坦々たる都大路を行くやうなとでも云はうか。この特長は初期の作品にもよくあらはれてゐたが、その大成の姿を示したものがこの細雪ではあるまいか。その重厚に大らかなものに更にきめのこまかさを加へて、まことにめでたいものである。これは源氏物語の現代訳を試みたことによつて、本来の好い素質のうへに、古典の骨...