永遠の詩人
えいえんのしじん
宿命生涯を貫く
しゅくめいしょうがいをつらぬく初出:「帝國大學新聞」1936(昭和11)年4月27日分量:約3分
書き出し:永遠の詩人宿命生涯を貫く萩原朔太郎僕は少年の時、島崎藤村氏と薄田泣菫氏の詩を愛讀した。やや長じて後は、蒲原有明氏や北原白秋氏の作を讀んだ。藤村氏と泣菫氏とは、少年時代の僕にとつて共に同じやうに好きであつた。しかしどつちかと言へばむしろ泣菫の方が好きであつた。その理由は、泣菫の詩に於ける特殊な佶屈の言葉と、その詩情に本質してゐる孤獨な憂鬱の陰影とが僕の個性に近く接觸するものがあつたからだ。之れに反し...