梅崎春生
いきなり降ってきた 自由のようでもある敗戦に 今迄は 正気であったとされる兵達は 軍事物資の掠奪に 狂奔するけど それ迄は 狂気とされていた 繊細な兵士は 自ら 短刀で喉をつき 自害する。その痛々しい兵の 脳裏には 赤い駱駝のような 壮烈な夕焼けが 遺されていた。静かな 反戦の意志が 伝わり 読み進むにつれて 不覚にも 落涙した。