追憶
ついおく
初出:「創作 第十六卷第十一號」1928(昭和3)年12月号分量:約8分
書き出し:若山氏の死について、遺族の方から御通知がなかつた爲、僕はずつと遲く、最近になつて始めて知つたわけであつた。明治大正の歌壇にかけて偉業を殘した、このなつかしい巨匠を失つたことは、個人としての友情以外に、深く痛惜に耐へないことである。僕が始めて牧水氏を知り、文學上での交遊關係を結んだのは、以前の雜誌「創作」の頃からだつた。當時僕は、室生犀星君と共に詩壇に出て、北原白秋氏の雜誌「ザムボア」に寄稿してゐた...