「死霊」の感想
死霊
しりょう

小泉八雲

分量:約3
書き出し:越前の国の代官、野本彌治衞門の歿した時、その下役の者共相謀って、その故主人の遺族をだまそうとした、代官の負債の幾分を償却すると云う口実の下に、その家の財宝家具全部を押えた。その上、故主人が無法にも自分の資産の価値以上の債務を契約したように見える偽りの報告書を整えた。この偽りの報告を彼等は宰相に送った、そこで宰相は越前の国から野本の妻子の追放命令を出した。その頃、代官の家族は、たとえ当主の死後でも、...
更新日: 2022/03/11
ace0443be3bcさんの感想

こよなく怪談話を愛する者なので、小泉八雲の小説は、問題なく星5つを付けるのだが、この「死霊」に関しては、5つを付けるのには、ちょっと躊躇する。 サムライの家のあるじが死んだとき、雇い人たちが共謀して、その家の財産をかすめ取ろうと画策し、偽の借用書を偽造したり、あたかも借財があるかのような偽の証文をでっち上げる。 いよいよ、役人がやって来て差し押さえになろうかというとき、突如、家の女中に亡き主人の霊が乗り移って、この差し押さえは、不正な企みから為されたことだから無効だと絶叫する。 さっそく、調べたところ、不正が明らかにされ、悪事を企んだ雇い人たちは、すべて捕縛され処罰された、という物語。 女中に主人の霊が乗り移って抗議の絶叫をするあたりは、恐ろしいし、すごい迫力には違いないが、「怪談」にしては、元気が良すぎはしないか、という気がする。 不正を証明するために、霊の憑依 した女中さんが、衆目監視のなかで、家財の貸借計算を目にもあざやかに、パチパチパチと正しいアタイを算出してみせる。 あんた、公認会計士か、という勢い。 古来、幽霊に高度な計算力を求めた例はなく、せいぜい「うらめしや」と、脅しかける方が専門なので、この会計監査のような復讐譚には、怪談らしからぬ違和感がどうしてもつきまとうのだと思う。 なので、星4つ。 相当な違和感といってるにしては、この高評価なのだから、やはり怪談好きなのだ、自分。