蕩児ミロン
とうじミロン
初出:「新青年」1926(大正15)年9月号分量:約17分
書き出し:若くもなければ美人でもないあの女に、ミロンがどうしてあんなに惚《のぼ》せたのか、それは誰にもわからぬ謎であった。ミロンはそれ以来、親友にも疎《うと》くなり、始終彼を見かけた場所へも、ぱったり顔を見せなくなった。そればかりでなく、彼は芸術のためという真摯《まじめ》な態度を棄ててしまって、下らない糊口的《くちすぎ》の絵を描きだした。或るとき旧友の一人が彼を諫《いさ》めた。「君は馬鹿だな、ミロン。君はこ...