根強い北陸文化
ねづよいほくりくぶんか
初出:「北陸中日新聞」1960(昭和35)年11月分量:約5分
書き出し:私が四高の学生だったころに、金沢から一人の若い青年が突如として、彗《すい》星のごとく日本の文壇にあらわれた。それは『地上』でもって、一躍世に出た島田清次郎であった。当時私は、寺町の医師の住宅に下宿していたが、この家は、そのころ金沢でも一流の料亭であった「望月」の並びにあった。犀川べりの高い岸の上に建っていて、縁先からは、はるかに医王山が望まれ、犀川の流れは、一望の下に脚下にひらけていた。月の夜など...