「十勝の朝」の感想
十勝の朝
とかちのあさ
初出:「新風土」1938(昭和13)年2月

中谷宇吉郎

分量:約4
書き出し:機会があったら今一度行ってみたいと思うものは、十勝岳の真冬の景色である。もう五年も前の話になるが、雪の研究のためと言って、二冬続けて、五度ばかりも十勝岳へ行ったことがある。十勝岳といっても、落着く先は、いつも中腹千メートルあまりの高さの所にあるヒュッテであった。そのヒュッテは、本当は森林管視人の住い家であって、その頃はO老人夫婦が棲んでいた。O老人はその生涯を北海道の雪の山中で過した変り者で、雪の...
更新日: 2022/05/14
cdd6f53e9284さんの感想

静かな十勝岳の徐々に明けてゆく美しい朝焼け、枝々に止まってさえずり歌っていた小鳥が飛び立つと、夜の間に降り積もっていた粉雪が舞い上がり、そしてまるで細かい花びらのように舞い散っていく。 中谷宇吉郎のこのような詩的な美意識が、彼の研究の基礎を固めているのだとしたら、まさに驚くべきことだ。