「浅草風土記」の感想
浅草風土記
あさくさふどき
初出:雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日

久保田万太郎

分量:約416
書き出し:雷門以北広小路一……浅草で、お前の、最も親密な、最も馴染のふかいところはどこだときかれれば、広小路《ひろこうじ》の近所とこたえる外はない。なぜならそこはわたしの生れ在所だからである。明治二十二年、田原町で生れ、大正三年、二十六の十月までわたしはそこに住みつづけた。子供の時分みた景色ほど、山であれ、河であれ、街であれ、やさしくつねに誰のまえにでも蘇生《よみがえ》って来るものはない。——ことにそれが物...
更新日: 2025/02/05
65c8aadc88adさんの感想

雙喜 大風呂横丁と 源水横丁の あたりに あの 喧しい 飴屋の ちゃんぎりの 音が 聞こえてくる。包丁で 伸ばし あげた 材料を ことさらに リズムよく 聞こえよがしに 手際よく 切り上げる。誓願寺の 寺領からは 寿司屋の 屋台 おでん屋の 屋台 天麩羅屋の 屋台 支那蕎麦屋 一品料理の 屋台が 夕暮の 空を 飛翔する 蝙蝠と 前後して 湧き出てくる。懐かしい 日の 沈む 頃の 風景であったと 感じた。