曇天
どんてん
初出:「帝國文學 第拾五卷第三」大日本圖書、1909(明治42)年3月分量:約15分
書き出し:衰残《すいざん》、憔悴《しょうすい》、零落《れいらく》、失敗。これほど味《あじわ》い深く、自分の心を打つものはない。暴風《あらし》に吹きおとされた泥の上の花びらは、朝日の光に咲きかける蕾《つぼみ》の色よりも、どれほど美しく見えるであろう。捨てられた時、別れた後《のち》、自分は初めて恋の味いを知った。平家物語は日本に二ツと見られぬ不朽《ふきゅう》のエポッペエである。もしそれ、光栄ある、ナポレオンの帝...