空想としての新婚旅行
くうそうとしてのしんこんりょこう
初出:「趣味 第二巻第五号」彩雲閣、1907(明治40)年5月1日分量:約3分
書き出し:新婚旅行とは噂を聞いても歯が浮くような気がするが、僕でも女房を娶ったら、悦《うれ》しくて可愛くて、蜜月旅行《ハネムーン》を企てたくなるかも知れん。どうせ我々貧者の妻君になりたいと云う奴なら、ろくな容貌を備えていよう筈はないが、其処は人情で、自分の妻と思うと、まんざらの顔でもないような気がする。品性に於いては当世稀に見る所だ、などと、腹の中ではほく/\喜んでる。で、旅行となると、原稿料の前借をして、...