弔辞(徳田秋声)
ちょうじ(とくだしゅうせい)
初出:「文学報国 第十号」日本文学報国会、1943(昭和18)年11月20日分量:約1分
書き出し:君は古稀を過ぐる長き人間生活に於て、また半世紀に達する長き文壇生活に於て、敢て奇を弄せず環境に身を委《ゆだ》ねて生存を持続されたり。人間の苦難を苦難とし、喜悦を喜悦とし、思想に於ても感情に於ても作為の跡は非ざりしようなり。君の文学は坦々として毫《ごう》も鬼面人を驚かすようなこと無く、作中に凡庸社会を描叙しながら、そのうちに無限の人間味を漂わせたり。熟読|翫味《がんみ》してます/\味わいのこまやかな...