表題からは想像出来なかった話の展開で、少々面食らった。しかしながら、読み進めて行くに連れて、作品に没頭できた。 昭和30年頃の朝鮮特需が終わりを告げようとしている時代が、今作品の背景に色濃く出ているように思う。太平洋戦争を経て、復興の最中に勃発した朝鮮戦争を身近に感じた作者の脳裏にあったのが、“軍国”であり、戦後復興に光を指したのが“歌謡集”であるのか。作品と題名を深読みしたくなるところである。 個人的には、今作品の主人公の心情に共感できる部分が多いのは、主人公の年齢のときに、少なからず、同じ様な感情を持っていたからかもしれない。