遠い他国のことなので、さっぱりイメージが湧かないが、カナダとイギリスなんか、ほんの隣同士のような気がしていたのだが、さにあらず、この小説を読んでみて、その船旅の壮烈さに驚かされた。 大嵐で難破する船だとか、霧のために見透しが効かずに大型船に乗り上げられて大破する小型船の話だとか、航海中に病気に罹って、妻の待つ港に帰ってきたときには、気息奄々の臨終間際の身になっていたとか、この物語のほとんどが、航海っていうものは、実に大変なことなのだ、といっていて、自分的に強烈にインパクトのある一節があった。 わが愛する恋人なり配偶者が航海に旅立ち、そのうちに通知も絶えて、待っても待ってもなんの音沙汰もなくなってしまったとき、彼を待ち続ける妻や恋人たちは、一体どうしたのだろうか、文中に明快な答えは書かれておらず、様々な悲喜劇が想像できる。