原民喜
美しい追悼歌。死と生の狭間の中で静かに朽ちていく。愛するゆえの悲しみが彩かな煌めきを一際放つ。全編詩情を湛えている。妖しい曼珠沙華のような暗い死の陰に怯えているが憧れてもいる。。遥かな場所に向かって落ちていくが、そこはもはや安住の地では無い。今生の中に必ずある喜びを美しい言葉で綴っている事が救い。
原爆の後遺症に苦しみ早世した作者、それよりも早く逝った妻、貧しくとも今より自然との距離が近かった時代。感受性の強い夫婦の清くも切ない物語。