「なきがら陳情」の感想
なきがら陳情
なきがらちんじょう

森於菟

分量:約18
書き出し:僕は自分の大学の新築四階建の三階角の部屋で、台風何号かが九州南方海上で日本本土か、朝鮮方面か、どっちへ抜けようかと、思案投げ首のもやもやに感応して、ただの残暑よりも頭が重く、廻転椅子にぐったりして、うつらうつら昔を思い浮べている。工場まがいのビルの連立に偉容を誇る近代の新制大学とちがって、医学部なんぞも、空をつく欅《けやき》並木に沿うて並んだ一つ一つの赤煉瓦のドッシリした独立建物が、主任教授たる大...