偽悪病患者
ぎあくびょうかんじゃ
初出:「新青年」博文館、1936(昭和11)年1月号分量:約52分
書き出し:(妹より兄へ)××日附、佐治さんを接近させてはいけないという御手紙、本日拝見致しました。いつも通り、いろんなことに気を配って下さるお兄様だけれど、喬子《きょうこ》、今度の御手紙だけはよく判んない。佐治さんは、喬子が接近したのでもないし、接近させたんでもないの。お兄様だって御承知の通り、お兄様や漆戸《うるしど》と同期生だったんですって。アメリカから帰られると、すぐ漆戸を訪ねていらっしゃって、それ以来...