万年青
おもと
初出:「婦人日本」毎日新聞社、1942(昭和17)年分量:約17分
書き出し:福子は笑い上戸《じょうご》で通っていた。睫毛《まつげ》のふかいパッチリと見開いた丸っこい眼《め》が、みるみる三日月になってクツクツと笑いだす。そばにいるものまで、つい、つりこまれて笑い出す始末だった。「まあ、福子さんたら、何がそんなに可笑《おか》しいの?」つりこまれて一緒に笑い出した友だちが、しまいにはおなかを痛くして、わけもなしに肚《はら》を立てて、こう恨《うら》みがましく福子を責めることさえあ...