子どもの感情と経験を描くのが実に上手い。友人が死んでしまったのじゃないか、そしてその責任の一端が自分にあるのではないか、そしてそれを大人に告白するのを大人たちがじっと待っているのじゃないか、こういう想像をしたことがあるのなら、彼らの痛みがよく分かるだろう。そしてそういう子どもの想像は、大抵妄想に過ぎなかった。世界は明るさを取り戻し、子どもは安心を取り戻す、だがもう彼は前とおんなじままの子どもではない。
自分たちのふざけ(いじめに近い?)のせいで、友人が死んだのではないかとの不安に取り憑かれ、少年の世界が輝きを失ってしまう描写が優れている。 自分の不安をうまく自覚することもできない、確認する行動にもうつせない、他者に尋ねることもできない、少年時代の不自由な未熟さがうまく描けていて、大人にとっては子ども時代のやるせなさを思い出す良作。
川に一番長く入ってたら 柿をあげると 言われたので 兵太郎が 最後に上がってきたら 久助達が 柿をかじり散らかしていた。 冷えきった兵太郎を おぶって 自宅に送り届ける。 その日から 兵太郎は 学校に来なくなる。 確かめる勇気がないので 悶々とした日が 続く。 筋立てに無理がある点が 散見されるけど 心の動きを 巧みに 伝えると感じた。
よくある感動的な友情の物語ではない。子供のリアルな心情が描写されているところがおもしろかった。