「栗山大膳」の感想
栗山大膳
くりやまだいぜん
初出:「太陽」1914(大正3)年9月

森鴎外

分量:約51
書き出し:寛永九年六月十五日に、筑前國《ちくぜんのくに》福岡の城主黒田|右衞門佐忠之《うゑもんのすけたゞゆき》の出した見廻役が、博多《はかた》辻《つじ》の堂《だう》町で怪しい風體の男を捕へた。それを取り調べると、豐後國《ぶんごのくに》日田にゐる徳川家の目附役竹中|采女正《うねめのしやう》に宛《あ》てた、栗山大膳利章《くりやまだいぜんとしあき》の封書を懷中してゐた。城内でそれを開いて見れば、忠之が叛逆《はんぎ...
更新日: 2020/11/07
19双之川喜41さんの感想

 暗愚の主君を 主と仰がなければならない家臣は 悲惨の極みで 孤立無援の中で 悪戦苦闘しつつ 仕えるのである。 興味深かったけど 陣立ての地名と任にあたる者の名前を 延々と 記しているのには 辟易(へきえき)した。

更新日: 2016/02/09
3e9c4b240bacさんの感想

筑前国福岡の城主、黒田右衛門佐忠之と、長年それに使えてきた栗山大膳利章という家臣の確執を巡って、一通の封書から始まる事件についてかかれている。 戦国時代の主君と家臣の、深イイ話。って感じ。 家臣の利章は、何も忠之のことが憎くて嘘の封書を幕府に送ったわけではないみたい。 主君に変わってほしかったから、苦肉の策で嘘の封書を認めたんだね。 家臣は、ただ盲目に主君に仕えるのでは駄目で、時には主君の誤った舵取りを正しい方向へと導かないといけないんですね。例えそれで主君から疎んじられようとも。 利章は自分の命をかえりみず、主君の目を醒まさせるために一連の騒動を起こしたのだった。 鴎外がこの記を遺そうと思ったのは、この物語にいたく感激したからじゃなかろーか。 明治人て、そーゆーとこありますよね。急速な近代化をとげ、モダニズムが普及し、旧来の道徳(君臣の在り方だとか家族の道徳とか)が失われるなかで、危機感を抱く人もいたし。 鴎外と同じ軍人であった乃木希典なんて明治帝崩御の時、後を追って殉死してるしね。 現代人的には、共感はできないけれど、明治の日本人にはそうゆーのが美談なのでしょうね。