「安井夫人」の感想
安井夫人
やすいふじん
初出:「太陽」1914(大正3)年4月

森鴎外

分量:約31
書き出し:「仲平《ちゅうへい》さんはえらくなりなさるだろう」という評判と同時に、「仲平さんは不男《ぶおとこ》だ」という蔭言《かげこと》が、清武《きよたけ》一|郷《ごう》に伝えられている。仲平の父は日向国《ひゅうがのくに》宮崎郡清武村に二|段《たん》八|畝《せ》ほどの宅地があって、そこに三棟の家を建てて住んでいる。財産としては、宅地を少し離れた所に田畑を持っていて、年来家で漢学を人の子弟に教えるかたわら、耕作...
更新日: 2021/09/25
3a8fb3b8b33cさんの感想

お佐代さんの望みは何であったのだろう ぶおとこに嫁いで何を楽しみに生きたのだろう 最後まで読んでも分からなかった

更新日: 2020/11/07
19双之川喜41さんの感想

 何ゆえ 痘痕▫片目▫小男と 小町と呼ばれた娘は 結婚したのか。 質素で 慎ましい生活に 耐えられたのは どうしてか。 おもに悪口しか 口にしない向きには 必読の書かもしれないと思った。

更新日: 2015/08/18
3e9c4b240bacさんの感想

幕末の漢学者、安井息軒とその妻、佐代についての歴史小説。 小説というほど主人公の内面に迫ったり情緒を綴ったりするような内容は少なく、特に表題にもなっている安井(佐代)夫人が息軒に嫁いでからは、あくまでも淡々と事実のみを書いている。史伝というか、史料を口語で書き下した印象である。 安井息軒は、優秀な頭脳を持ち漢学者として当世一流の名を残したが、色黒、ちび、あばた面、隻眼と、外見はすこぶる醜男。どんな女もこの男との結婚は嫌がるであろうところ、なんと当時評判の美人だったお佐代さんが自らこの男に嫁ぎたいと言い出した。 で、婚姻をむすび息軒はすばらしい学業を残すが、冨や名誉におぼれず清貧を極めた生活を送る。お佐代さんもそんな夫によく遣え、終生、贅沢とは無縁の生活を送り、51歳でその人生の幕を閉じた。 内容は、こんなかんじ。さらっと読んでしまえるけれど、「美人であった安井夫人が何故、醜男の息軒に嫁いだのか?」「何を思って夫や子供の世話をし、どのような気持ちでその人生を終えたのか」など、メンタルに迫る記述は(ほとんど)無いので、読者の推量にまかせられる。読み終えたときは本当に不可解だったし、小説といえるほどのストーリーせいもないように思われたので、なんかなーって感じだったが、よくよく考えると、 「お佐代さんが当時珍しく『自ら望んで人生を切り開いた』(親の言いなりでなく、自分の望む相手と結婚した)」点は、明治期のいわゆる自由主義的なハイカラ女性に通じるものがあるよね、とか 結婚において何を重視するのか?(ルックスとかお金とかではなく、お佐代さんの場合は、夫の栄達こそが、自分の生き甲斐だったのではないかな、と…。)とかがまぁ、うっすら見えてくるわけです。 だから、お佐代さんは経済的にも恵まれなかったし夫はイケメンではなかったけれど、 すばらしい学業を成した夫に遣えることこそが彼女の喜びであり、同時にブサメンであっても学識に富んだ夫のことが誇りであったのだろうな~と。 実際はどうだったのか知りませんが、彼女の人生は決して不幸ではなかったろうと、(鴎外翁も言ってますが)私もそう思います。