「汽笛」の感想
汽笛
きてき

佐左木俊郎

分量:約12
書き出し:改札孫の柴田貞吉《しばたていきち》は一昼夜の勤務から解かれて交代の者に鋏《はさみ》を渡した。朝の八時だった。彼は線路|伝《づた》いに信号所の横を自宅へ急いだ。「おーい!馬鹿に急いで帰るなあ」信号所の中から声をかけたのは彼と同じ囲いの官舎にいる西村《にしむら》だった。彼は振り返って微笑《ほほえ》んだ。突然で言葉が出なかったのだ。「細君はどうなんだ?幾分かはいいのか?」「同じことですね。起きてはいます...