“この世に生まれた以上何かしなければならん、といっても何をして好いか少しも見当が つかない” 夏目漱石は大学を卒業し、教師として日々を過ごす中で“腹の中は常に空席”であった。 どんな書物も読んでも依然として“自分の本領を見つけれらず、何のために書物を読むのか 自分でもその意味が解らなくなる。 そこでロンドンへ留学中の夏目は下宿の一間で“文学とはどんなものであるか、その概念を 根本的に自力で作り上げるほかに、私を救う途はないのだと悟った” 西洋時の価値観に迎合し“人の尻馬にばかり乗って空騒ぎ”するのではなく、“文芸に対する自己の立脚地を”新しく建築することを生涯の事業としようと考えた。 夏目は聴衆へ他人がいかに下らないと考えても“自分で自分が道をつけ”何かにうち当たる まで行くことの重要性を説く。
一言一言が身に染みてためになった。もっと早くこの本に出会っていれば。しかし、人間って文明がどれだけ発展しても精神的な所は何一つ進化してないんだなと。これから何百年経っても変わらず支持され続ける考え方なのだろうと思う。
その頃 はやりの ベルグソンの 尻馬にのるということ だけでなく自らの立ち位置を 漱石ははっきりさせようとしていた。 自己省察力を頼みに 卓越した自省力をも抜きん出ていたように 思えてしまう。
我輩は猫であるの金田には、漱石がこの講演で注意喚起している金や権力で全て片付けようとする輩のイメージが投影されていたんだね。
夏目漱石が、自分探ししていたときの心境などがつづられていました。 いま、くすぶっていて何か変化を求めている人が読んだら、ヒントや発見があるかもしれません。
個人主義という呼称は漱石の言わんとすることの全てを表現しきれているとはとても思えない。 世の中の個人主義という言葉の意味を真剣に思索したことのない方は是非当書を一読し、個人主義の在り方について考察すると良いのではと思う。 そしてその後に、社会を見つめてみて欲しい。 漱石が生きた時代から百余年は優に過ぎている、私たちの暮らす社会を。
本題に入るまでが長く、少々退屈ですが非常に面白いです。 特に個性のくだり、 30半ば、ずっと自分の中でもやもやと燻っていたものが、単純明快、この上もなく的確に著されていて、言葉を操る人の凄みを感じました。 是非読んで欲しいです。
漱石先生はなんと正直で率直な方でしょう! 先生がこうした境地に達せられた経緯と、これから世にでる若者たちへ人生で大切なことは何かということを平易な言葉で述べた講演録です。安倍さんやトランプさんに読ませたい!無理でしょうけど。
演説を聴けた学生や教師たちは 爽やかな感慨を持っただろうなと 想像しました。 解りやすい言葉と いろんな例をあげて構成され 説得力が あります。 『権力、金力、権利と義務、個性の発展、本当の自由 』など 、改めて 深く 心に残りました。 夏目漱石さんは、正直で 控えめで(いい意味で) 義務感の強い方だと 感じました。 他人への思い遣りも つよい。
100年経っても漱石の懸念は払拭されていない。いまの安部総理をはじめ自民党国会議員にはこれをあらためて読んで欲しい。
夏目漱石が自分の半生を振り返りつつ、留学時代に触れたイギリス流の個人主義を紹介している。現代に通ずる部分は多く、一読の価値あり。講演会の話を文章化したものなので、終始、平易な語り口調だ。堅くなる必要はない。珍しいから、ちょっと食べてみよう。そんな軽い気持ちで読んでみるといい。
100年前に書かれた作品ですが、現在もそのまま通じる内容です。
作者の「自分には何も本領がない」という悩みに非常に共感できたので、その後に続いた個性の発展が幸福に必要であること、そして他人個人の意見や行動を尊重すべきであることが私自身のこれまでの経験・立場・意見を伴って腑に落ちた。 先生の考えの一つ一つに納得できるとても面白い講義でした。もっと聴いていたかった。